STEP 01 / WHAT
調べられたのは「国籍」ではなく、登記簿に書かれた住所
はじめに、この調査が何を調べたものかを整理しておきます。調べられたのは、登記簿に書かれた所有者の住所が日本国内か国外かという点です。国籍ではありません。国土交通省の資料にも「所有者の国籍把握は現行制度では困難であるため、国籍の判定は行われていない」と書かれており、不動産の登記簿に国籍を記載する欄はありません。そのため「国外に住所がある者」には、海外で暮らす日本人も含まれます。逆に、日本に住んでいる外国籍の方が購入した場合は、国内の住所として数えられます。この記事で「海外に住所のある人」と書いているのは、そのような意味です。
STEP 02 / CITIES
さいたま市は0.3%。東京23区は2.8%
2025年に登記された新築マンションのうち、海外に住所のある人が取得した割合を、政令指定都市と東京23区で並べました。
国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析について」(2026年9月15日公表)。保存登記のうち、所有者の住所が国外だった物件の割合。参考:都心6区は5.9%。
さいたま市は0.3%でした。1,000戸のうち3戸という水準です。最も高いのは大阪市の5.5%で、次いで東京23区の2.8%となります。東京の中でも地域差は大きく、千代田区は15.4%、渋谷区は11.1%、新宿区は9.5%にのぼりますが、葛飾区は0.1%、墨田区は0.0%でした。都心の一部とそれ以外の街とでは、まったく別の数字になっています。埼玉県全体では0.2%で、全国でも低い水準です。
STEP 03 / TREND
埼玉県の数字は、8年間ほとんど動いていない
単年の数字だけでは、増えているのか減っているのかが分かりません。2018年からの推移を見てみます。
| 地域 | 2018〜2023年で最も高かった年 | 2024年 | 2025年(新築) | 2025年(中古) |
|---|---|---|---|---|
| 東京23区 | 2018年 2.0% | 1.6% | 2.8% | 2.7% |
| 都心6区 | 2018年 5.3% | 3.2% | 5.9% | 5.6% |
| 東京都 | 2018年 1.8% | 1.5% | 2.5% | 2.5% |
| 大阪市 | 2021年 3.6% | 5.1% | 5.5% | 4.4% |
| 埼玉県 | 2018年 0.3% | 0.2% | 0.2% | 0.5% |
| さいたま市 | 2022年 0.6% | 0.3% | 0.3% | 0.4% |
国土交通省による同調査の公表資料に年ごとの数値が掲載されているのは、2024年と2025年、そして2018〜2023年で最も高かった年のみです。新築は保存登記、中古は移転登記を分母にした割合となっています。
東京23区は2024年の1.6%から2025年は2.8%へ上がりました。都心6区も3.2%から5.9%へと上がっています。一方、埼玉県とさいたま市は2024年と2025年で同じ数字で、2018年から2023年までのいちばん高い年を見ても、埼玉県は0.3%、さいたま市は0.6%にとどまります。国土交通省は資料の中で「その年にどのようなマンションが供給されたか等によって、数字が大きく変動する」と繰り返し述べています。分母はその年に登記された戸数のため、大きなタワーマンションが1棟建つだけでも割合は動きます。埼玉の数字が動いていないというのは、そうした変動を含めても落ち着いているということです。
STEP 04 / USED
中古マンションでも0.4%
今回の調査では、中古マンションの数字が初めて公表されました。新築は「新しく登記された戸数」が分母ですが、中古は「売買によって所有者が変わった件数」が分母になります。
国土交通省の同調査。新築は保存登記、中古は移転登記を分母にした割合。都心6区は新築5.9%・中古5.6%。
さいたま市は中古でも0.4%で、新築とほとんど変わりません。東京23区も新築の2.8%に対して中古は2.7%と、ほぼ同じ傾向でした。特徴的なのは福岡市で、新築1.8%に対して中古4.8%と、中古のほうが高くなっています。札幌市も同様の傾向です。なお、国土交通省は中古マンションの取得について、「直近で増加している傾向は特に見られない」と記しています。
STEP 05 / ORIGIN
どこの国・地域に住む人が買っているのか
住所がある国・地域別の内訳は、東京23区についてのみ公表されています。実際の件数で確認します。
国土交通省の同調査。登記に記載された住所の国・地域別の件数。右は合計。
国土交通省の同調査。移転登記に記載された住所の国・地域別の件数。右は合計。
新築では、2018年は中国・香港・台湾が同程度でしたが、2025年は台湾が254件で全体のちょうど半分を占めました。英国の73件がそれに続きます。件数そのものは2018年の515件から2025年の508件とほぼ同じで、増えてはいません。中古では中国が842件で最も多く、台湾が710件で続いています。こちらも2018年の2,035件から2025年の2,105件への推移であり、大きな変化は見られません。ただし、これは東京23区の数字です。さいたま市の内訳は公表されていません。
STEP 06 / RESALE
1年以内の転売は、8割以上が国内の法人
この調査には、もう一つの柱があります。取得してから1年以内に売却された「短期売買」の割合です。マンションの値上がりと関係が深いと言われている部分です。
国土交通省の同調査。保存登記から1年以内に移転登記がなされた物件の割合。1棟100戸以上の大規模マンションは9.0%、それ以外は2.9%(東京23区・40㎡以上)。
国土交通省の同調査。短期売買が行われた件数のうち、買主または売主が法人であるものの割合。
東京23区では、新築マンションの9.7%が1年以内に売られています。都心6区では12.1%にのぼり、8戸に1戸の計算です。これに対して、さいたま市は1.6%にとどまりました。埼玉県全体では4.5%です。そして、この短期売買を行っている主体の8割以上は法人でした。中古マンションではさらに割合が高く、97.3%が法人による取引です。海外に住所のある人による短期売買は、東京23区の中古でも1.3%にとどまります。短い期間で価格が上がっていく動きの中心にいるのは、海外の個人ではなく国内の法人であることが、この数字から読み取れます。
STEP 07 / CENTRAL TOKYO
都心6区では、名前から推計した割合も公表された
今回、都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)については、もう一つの数字が公表されました。登記簿の氏名から外国人と推計される方や、本店が国外にある法人を合わせた割合です。国籍を判定したものではなく、あくまで推計です。
国土交通省の同調査。登記の氏名から外国人と類推される個人と、本店が国外にある法人を合わせた割合。国籍の判定は行っていない。住民の割合は住民基本台帳に基づく外国人人口の割合。新築・中古の両方を含む。
国土交通省の同調査。(株)不動産経済研究所の価格データと登記情報を突合できたもののみを集計。国土交通省は「高額物件の購入に偏っているという傾向は特に見られない」としている。
都心6区における取得割合は、2024年の13.1%から2025年は11.9%へと1.2ポイント下がりました。同じ区に住んでいる外国籍住民の割合は9.1%ですから、取得割合はそれより少し高い水準です。価格帯で見ると、2億円以上の高額物件における海外住所の割合は6.4%、2億円未満では4.0%でした。国土交通省は「高額物件の購入に偏っているという傾向は特に見られない」と分析しています。
STEP 08 / URAWA AND OMIYA
では、浦和と大宮の値上がりは何で動いているのか
さいたま市の数字が0.3%にとどまっていることは、浦和や大宮で家を買う方や売る方にとって、落ち着いて考える材料になります。この街の相場を動かしているのは、海外からの買い手ではなく、もっと身近な要因です。
| 区 | 成約㎡単価(中央値) | 10年前から | 成約件数 | 海外住所の取得割合(市全体) |
|---|---|---|---|---|
| 浦和区 | 73万円/㎡ | +67.1% | 465件 | 新築0.3%・中古0.4% |
| 大宮区 | 72万円/㎡ | +84.9% | 369件 | 新築0.3%・中古0.4% |
| 南区 | 60万円/㎡ | +69.6% | 544件 | 新築0.3%・中古0.4% |
| 中央区 | 56万円/㎡ | +46.5% | 204件 | 新築0.3%・中古0.4% |
浦和区の中古マンションは1㎡あたり73万円で、10年前から67.1%上がりました。大宮区は72万円で84.9%の上昇です。同じ時期に、海外に住所のある人の取得割合は0.3%前後で動いていません。今年9月に公表された基準地価でも、さいたま市の129地点のうち下がった地点はゼロで、浦和区と大宮区の駅前が市内の上昇率の上位を占めました。東京の価格が上がり、都心から川口を越えて人と需要が移ってきていることが、浦和や大宮の相場を支えている要因です。
2026年の基準地価、浦和と大宮はどう動いたか→浦和区に来た人は、どこから来たのか。5年前の住所で追う→SUMMARY
まとめ:さいたま市は新築0.3%・中古0.4%
| 見方 | 数字 |
|---|---|
| 何の調査か | 登記簿の所有者住所が国内か国外か。国籍の調査ではなく、海外で暮らす日本人も含まれる |
| さいたま市 | 新築0.3%・中古0.4%(埼玉県全体は新築0.2%) |
| 東京 | 23区は新築2.8%・中古2.7%、都心6区は新築5.9% |
| 国・地域 | 23区の新築は台湾254件が最多。中古は中国842件・台湾710件。件数は2018年とほぼ同じ |
| 1年以内の転売 | 23区9.7%・さいたま市1.6%。新築の8割以上、中古の97.3%が法人 |
| 都心6区の推計 | 外国人と推計される取得者は11.9%で前年から1.2ポイント低下 |
この記事のまとめ国土交通省が公表したのは、登記簿の住所が国外かどうかの調査であり、国籍の調査ではありません。海外に住所のある人が取得した割合は、さいたま市で新築0.3%・中古0.4%、埼玉県全体でも0.2%でした。8年間ほとんど動いていません。東京23区の2.8%や都心6区の5.9%とは水準が違います。1年以内の転売もさいたま市は1.6%で、東京23区の9.7%とはまったく異なる水準です。しかも短期売買の8割以上は国内の法人によるものでした。浦和や大宮で住まいを探している方は、海外からの買い手を心配するよりも、都心からの人の流れや地価の動きを見ておくほうが判断の役に立ちます。
HOW TO READ
使った数字と読み方
数字はすべて、国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析について」(2026年9月15日公表)から引用しました。調査の対象は2018年1月から2025年12月までに登記された三大都市圏と地方四市のマンションで、新築が約57万戸、中古の移転登記が約150万件です。新築の割合は保存登記、中古の割合は移転登記を分母にしています。短期売買は、取得から1年以内に次の売買の登記がされた割合です。国土交通省は、その年に供給されたマンションの内容によって割合が大きく変動すると注意を記しており、この記事の数字も1年ごとの動きとして捉える必要があります。
中古マンションの成約相場は、国土交通省 不動産情報ライブラリ 不動産取引価格情報・成約価格情報(中古マンション等)を当社が区の全域で集計した値です。2023〜2025年の成約㎡単価の中央値で、「10年前から」は2013〜2015年との比較です。